スイス・リーの最新レポート: 平均寿命延伸の次なる波は間近

  • 平均寿命は20世紀末に大きく延びるも、過去10年で延伸のペースが鈍化
  • 今後20年間の寿命の延びは、特にがんおよびアルツハイマー病など加齢関連疾患の医学の進歩が寄与すると考えられる
  • 先進市場における平均寿命の延びは、肥満、医療へのアクセス格差、長寿の足かせとなっている米国の凶悪犯罪およびオピオイド危機により脅かされている
  • 一番の長寿国である日本およびスイスは、医療へのアクセスの良さと肥満率の低さが特徴

人間の寿命の延びは過去10年間でペースが鈍化しましたが、スイス・リーの最新レポート「平均寿命の未来:保険のための長期死亡率改善トレンド予測」によれば、がんの診断および治療の進歩により、社会は寿命の延びの次の波に近づいています。さらなる改善にはアルツハイマー病や神経変性疾患などの高齢者の健康問題、ライフスタイル要因、および医療へのアクセスへの取り組みが求められます。

スイス・リー ライフ&ヘルス再保険 CEO ポール・マレーは、「人々は100歳以上の長寿を思い描き続けていますが、20世紀のような寿命の延伸は危ぶまれています。医学研究に寿命を大幅に延ばす次の波を引き寄せる力があることは明らかですが、健康長寿を実現するには、個々が健康的なライフスタイルを選択し維持すること、そして社会が医療へのアクセス上の障壁を改善することが必要です」と述べています。

平均寿命の延びには波があり、一般的には飛躍的な医学の進歩や大規模な社会的トレンド(喫煙率の低下等)の後で大きく改善します。20世紀には、血圧およびコレステロールを下げる画期的な治療薬により平均寿命が大幅に延びました。世界の平均寿命は、1950年代終わりに生まれた人が55歳であったのに対し、2020年に生まれた人は70歳をはるかに超えるまでに延びています。

しかし、2010年以降多くの国で、肥満に関連した疾患、アルツハイマー病の影響拡大、および医療へのアクセス格差などが寿命の延びを脅かしており、先進市場では延びが横ばいになっています。

米国における平均寿命の短縮

米国における平均寿命の短縮 米国は他の先進市場と様相を異にしています。2019年時点で米国においては全人口のうち社会経済的地位が最も高い10%にしかOECD男性平均の約80歳、女性平均の約84歳に相当する出生時平均寿命がありません。社会経済的地位が最も低い10%に区分される男性の場合、平均寿命は73歳と、OECDの平均である80歳を大幅に下回っています。米国におけるこのトレンドは、社会経済的格差の拡大に起因する医療へのアクセス格差に関連すると考えられています。人口の推定70%が肥満であるため、2型糖尿病の有病率も上昇しています。さらに、1999年以降オピオイド関連死が8倍に増加しており、平均寿命に影響を及ぼしています。

英国の平均寿命は医学的進歩の遅れにより短縮

英国で1968年から2010年にかけて見られた寿命の延びのうち、約70%は循環器系疾患による死亡率の大幅な低下によるものであり、平均寿命は71歳から80歳へと改善しました。しかし、2010年以降の延びはわずか1歳に留まっており、これは、がん治療に大きな進歩が見られないことや、認知症および呼吸器疾患の影響が増大していることにより、それまでの寿命の延伸が阻害されたためであると考えられています。

日本とスイスは長寿の優秀国

日本およびスイスの出生時平均寿命は先進経済中トップクラスである84歳に達しています。両国とも1960年の平均寿命はおよそ70歳でしたが、心血管系の健康状態が改善したことにより平均余命が改善しました。

成功の鍵はライフスタイル要因および十分な資金に支えられた医療システムへのアクセスの良さです。日本は注目すべきことに、国民へ塩分摂取量を控えるよう呼び掛けるという比較的簡単な方法で1980年から2012年の間に脳卒中関連死を80%以上減少させることに成功しました。

平均寿命改善の次の大きな波

スイス・リーのレポートによれば、平均寿命を大きく改善する可能性が最も高いのはがんの治療および診断です。例えば、液体生検によりある種のがんの発見が容易になり、一般的治療からそれぞれの患者に見合った最適な治療法へと移行することで生存率が改善すると期待されています。加えて、新型コロナのパンデミック中に採用されたmRNAワクチンの利用拡大もさらなる改善をもたらす可能性を秘めています。

公共政策もがん検診の普及に大きな役割を担っています。例えば英国では、がんスクリーニング受診率の改善により生存率が50%以上改善したことが示されています。

寿命を延ばすには、特にアルツハイマー病やその他の認知症などを含む高齢者特有の疾患への対策が鍵となります。例えば、英国では2040年までにアルツハイマー病患者が約2倍の160万人超に達すると予測されています。現在この分野では、症状を緩和する以外の治療法はほとんど存在せず、治療計画も物議を醸すなど、研究が比較的遅れています。

技術分野における新たな進展も平均寿命に大きな影響を及ぼすかもしれません。医学研究および治療法の決定過程における人工知能の登場、個人の健康状態をモニタリングするウェアラブルデバイスやアプリ等が今後の改善につながる可能性があります。

スイス・リーのグローバルアンダーライティング、クレームス、R&D部門のヘッド、ナタリー・ケリーは次のように述べています。「医療技術、ライフスタイルの変化、および医療へのアクセスはいずれも平均寿命延伸の次なる波を推進するでしょう。公共・民間セクターともに重要な役割を担っており、保険業界としても、お客様が最も必要とする時に保険を提供し続けられるよう、これらの複雑な要因を理解し、健康長寿のためのライフスタイルを促していく必要があります」

スイス・リーについて

スイス・リー・グループは、世界のレジリエンス向上を目指し、再保険、保険、その他保険ベースのリスク移転で世界をリードする大手再保険会社です。自然災害、気候変動、高齢化、サイバー犯罪などのリスクを予測・管理します。スイス・リー・グループは社会の繁栄・発展を可能にし、お客様のために新たな機会やソリューションを作り出すことを目的としています。1863年にスイスのチューリッヒで創業したスイス・リーは、世界約80カ所で事業拠点を展開しています。

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